青のキセキ



『翔』を出て、大通りまで歩く。



突然、美空が『たまには私が払う』なんて言ってきた。


は?

そんなこと、させられるわけがないだろ。

惚れた女に金を出させるような真似は出来ない。





――――あ。もしかして...。俺の懐具合を心配してるとか...?




そりゃ、そうだな。



家とマンションの二重生活。普通、生活でいっぱい×2だと思うよな。




こいつには話しておくべきか。




「お前だけに言っておくけど...」



実は、資産運用が上手く行き、それを元に何軒か不動産を所有していて、かなりの額の貯金がある。


でも、それについては綾には一切話していない。


綾にはJPフードの給料の額だけしか知らない。


結婚し立ての頃。
給料を全額渡してたら、全く遣り繰り出来ずで、自分の欲しいものを買いまくった綾。

生活費全て使い込んでいた。


それ以来、決まった額だけを綾の口座に振り込むようにした。とはいっても、食費に小遣いとしては十分な額だと思う。貯金もできるはず。


資産運用の元手は、社会人になるまでの俺の貯金。だから、綾には一切関係のない金。

別に金が惜しくて綾に言わないんじゃない。


綾のためにならないから言わなかった。これからも言うつもりはない。


仕事をせずに、生活する気は更々ない。

だから、簡単に仕事を休めと言う綾に腹が立った。

仕事というものの、大切さ。
働くことの意義。


楽して生活はできないことを分かって欲しかった。


まぁ、てな訳で。


美空には誤解のないよう、説明した。


毎月の給料で、遣り繰りしながらも少しずつ貯金していると言った美空。

がんばって仕事しなきゃ...と言う美空が、俺には輝いて見えたんだ。




明日は出張。



美空と九州を楽しみたいと思う。




泊りがけだということを意識しないわけではないが、無理強いをするつもりはないし、美空と二人で過ごす時間を大切にしたい、そう思った。















< 298 / 724 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop