青のキセキ
タクシーの後部座席の窓から、流れる景色を見る。
視界に映るのは、私の知らない街。
なのに、私の頭に思い浮かぶのは、二人並ぶ課長と綾さん。
綾さんが課長に寄りかかり、そんな綾さんを支える課長の姿。
「......」
何も考えたくない。
ギュッと目を瞑る。
「美空ちゃん、大丈夫?気分悪そうだよ」
「...心配かけてごめんなさい」
「気にしないでいいよ。ていうか、俺が勝手に心配してるだけだから」
石川さんの言葉に、胸が痛い。
まだ私を想ってくれてるんだと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
どんなに想ってくれても、私が側に居てほしいと思うのは課長だけだから。
タクシーが私のマンションの近くのコンビニで停まる。何となくマンションを知られたくなくて、買いたいものがあるからと、ここで降ろしてもらうことにした。
「ゆっくり休んで」
私を優しい眼差しで見る石川さん。
「ありがとうございます。タクシー代は...」
「俺が立て替えておくから大丈夫だよ。経費で落ちるし、明日会社に請求するから」
「おやすみなさい」
タクシーが見えなくなるのを待って、マンションまで歩きながら考えるのは、やっぱり課長のことだった。
部屋へ入るなり、ベッドに横になる。
深いため息。
今日はとても疲れた一日だった。