青のキセキ


翌日の午後。


クライアント回りに美空を同行させた。その帰りにカフェでお茶をしている時に、昨夜の綾の電話のことを美空に打ち明けた。







話を聞いた美空は、かなり動揺しているように見えたが、すぐに平静を装って

「そう...ですか」

と言ったきり、何も言おうとしない。



アイスティーを一口飲み、遠くを見つめる美空。




「こんなことになって本当にすまない。言い訳にしかならないが、断ってお前とのことを気付かれても困る。少しの間、我慢してもらえるか?」



自分勝手だと思う。


いっその事、綾に全てを話すことができれば...。



しかし、それだけは避けたい。あいつの気の強さ、プライドの高さを知っている以上、美空のことは今は話せない。


もし、綾が美空のことを知ったら...。綾は間違いなく、俺ではなく美空を傷付けるだろう。





「課長。私は大丈夫です。分かってますから。だから、気にしないでください。週末会えなくなるのは寂しいけれど、その分、月曜に会える楽しみが増えるから」




『大丈夫』


俺は、美空に何度その言葉を言わせているのか。




大丈夫なわけがない。俺の為に嘘を吐いているのだと分かってる。



正直な気持ちを言えと言っても、お前は言えないんだろう。




俺の為に...無理をしてでも、再び『大丈夫』だと言うのだと分かるから。


だから、俺はそれ以上、何も言えなかった。
















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