青のキセキ
「お待たせ」
切れ長の目で微笑みながら入ってきた彼が、席に着いた。
「お帰りなさい」
彼の目を見つめて言葉を掛ける。
「ただいま」
微笑みを崩さず、私を見つめて彼は言った。
それだけで、心が通じ合う感じがした。
課長は、私の『安らぎ』。
テーブルの上に、注文した料理が並ぶ。
ビールで乾杯を交わし、久しぶりの二人の時間を楽しむ。
「突然帰って来るなんて、びっくりしました。どうして教えてくれなかったんですか」
「ごめん。美空の驚く顔が見たかったんだ」
笑顔でそう言われたら、何にも言えないじゃない。
「会いたかった」
課長の言葉に、鼓動は加速。
「私もです」
照れながら言った私の手を課長が握る。
「出張が終わるまで寂しい思いをさせる。ごめんな」
課長の言うとおり、正直寂しい。会いたいときに会えないし、声を聞きたくても遠慮なしに電話できない。
でも、悲しそうな表情を浮かべる課長が愛しくて、強がってしまう。
「大丈夫です。課長が帰って来るまで仕事に精進します」
食事を終え、店を出た私達。
「...美空。明日も仕事だから、家に帰さないといけないと分かってる。でも、帰したくない。一緒に過ごしたい」
少し前を歩いていた課長が、立ち止まり振り向いて言った。
ドクン――――
胸が震え、愛しさがこみ上げる。
「私も...課長と一緒に居たいです」
課長と一緒にタクシーに乗り込み、郊外のシティホテルへ向かう。
胸の鼓動が激しくて、課長に聞こえないか気になった。
タクシーがホテルに到着。彼がチェックインを済ませ、部屋へ入った。
やっと二人きりになれた。