青のキセキ
今回作るスイーツは全部で10種類。
佐山さんと案を出し合い、練ったもの。
小児科用のお菓子と同様、様々なケースを想定して考えたスイーツ。
スイーツ作りに必要な材料を説明する私を、口角を少し上げて見る修一さん。
視線が重なるたびに、心臓が止まるんじゃないかと思うぐらいの恐怖を感じ、資料を持つ手が小刻みに震えた。
『気にしちゃダメ』
『大丈夫』
そう自分に言い聞かせ、掌の汗を拭うようにスカートを握りしめる。
その後、修一さんの視線が気になったけれど、彼の方を出来る限り見ないようにしてひたすら試作品作りに没頭する。
作り方の説明をしながら、佐山さんと協力し合って一つ一つ丁寧に作っていく。
実は、本番で失敗しないように佐山さんと二人で事前に試作品作りの予行演習をしていた私達。
そのお陰で、失敗することなく全ての作品を作り終えた。
味だけでなく、見た目にもこだわった自信作がテーブルの上に並ぶ。
出来上がったスイーツを見て、それぞれが口々に感想を述べる。
とりあえず、見た目に関しては高い評価を得た。
次は、試食。
一口ずつ口に運び、じっくりと吟味している様子。
眉間に皺を寄せて口を動かしているシェフの表情が、一転して満面の笑みに変わった。
「素晴らしい!」
宏一さん、修一さんも頷きながら、スイーツの試食を続ける。
その様子をドキドキしながら観察する。
全ての試作品の試食が済み、今回も一発OKをもらうことができた。
宏一さんや修一さんからお礼を言われ、佐山さんは嬉しそうにしている。
シェフも『想像以上の出来』だと褒めてくれた。
何度も案を練り直し、考えた甲斐があった。
クライアントの喜ぶ顔を見ると、とても嬉しい。
例え、それが修一さんであっても。
自分の仕事に誇りを持ってるから。