青のキセキ
「あら?美空さん?久しぶりね」
私に気付いた綾さんがニッコリと笑って言った。
「お久しぶりです」
声が震えそうになりながら挨拶をした。
「翔...久しぶり」
「......」
綾さんの方をチラッと見て、すぐに目線を元に戻した翔さん。
「...相変わらず嫌われてるのね」
寂しそうに呟いた綾さんが、当たり前のように課長の横に座った。
その光景をみて、胸がズキンと痛む。
「今日はお店休みなの?」
周りを見渡して、綾さんが言った。
誰も返事しようとせず、気まずい雰囲気がその場に漂う。
「4人で何の話してたの?」
綾さんの問いに、血の気が引く思いがした。
女の感は鋭い...。このままじゃ...気付かれる。
「仕事のことで悩んでいることがあったので、課長に相談に乗ってもらおうと思ってたんです。久香に相談したらお店を使っていいと言ってくれたので、お言葉に甘えちゃいました」
必死に口角を上げて言った。
「そう言えば、美空さんと久香さんは家族も同然て言ってたわね」
綾さんは別に気にも留めない様子で笑みを浮かべていた。
「相談は終わったの?」
「いえ...。でも急ぎませんから、またにします。私、帰りますね」
いたたまれなくなった私が、課長に頭を下げて帰ろうとした時...。
「待って、美空さん。あなたもいてくれないかしら?」
「え?」
「大和に大切な話があって来たの。翔にも聞いてほしくて...。美空さんも久香さんも、よければ聞いてくれる?」
綾さんは微笑みを崩さずに私たちを見渡した。
「みんなに聞いてほしいって...一体何の話なんだよ?」
イラついた様子で翔さんが言った。
「綾...何かあったのか?」
ずっと黙っていた課長が綾さんに問いかけた。
「大和、これを見て」
すると、綾さんは鞄の中からある物を出して課長の前に置いた。