青のキセキ
「いつだったか...私、遥菜に言ったことがあるんです。海堂さん、お金持ちなんだから、服やカバンとかアクセサリーとか買って貰ったらいいのに...って」
久香さんが震える声で言う。
俺もずっと知りたかった。どうしてあいつは何も欲しがらなかったのか。
誕生日プレゼントは決まって『食事』だった。
それは美空が望んだからだ。
何か買おうにも、断られた。
それは何故なのか。
旅行の時の指輪も、俺が無理矢理に押し付けたようなものだ。
すると、久香さんの口からその理由が語られた。
それは...。
「課長に貰った時計を見る度に、課長のことを考えてしまうの。見る度に彼に会いたくなる。彼に触れたくなる。週末は特にそう。今頃綾さんと何を話してるんだろう...何してるんだろう...何を食べてるんだろう...そんなことばかり考えてしまうんだ...本音を言えば、私だって色々欲しいよ。だけどね、これ以上課長に貰った物が増えたら...私...おかしくなりそうで。そう思ったら何も貰えなくなっちゃった...」
美空が哀しそうに笑ってそう言っていたと、久香さんは教えてくれた。
「遥菜...こうも言ってました。海堂さんに、そんな嫉妬深い自分を見せたくないって」
「あの子..本当に海堂さんのことを愛していたから...」