青のキセキ
夕方。
俺はホテルを訪れた。
車を駐車場に停め、可愛らしい建物のドアを開けた。
中に入ってすぐ受付のカウンターがあり、そこに真柴氏と思われる人物がいた。
大きなホテルチェーンの社長だというから、もっと年輩かと思っていたが、目の前にいる人物は俺と変わらないじゃないか。
一瞬、どこかで見たことのある顔だと思ったが、どこで会ったかなんて思い出そうともしないまま。
「遠い所をわざわざ来てくださいまして、ありがとうございます。和グループの真柴薫です」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。海堂物産の海堂大和です。この度は我が社との取引、ありがとうございます」
挨拶と名刺の交換だけを済ませ、真柴氏は先ず部屋へ案内してくれた。
2階の奥にある部屋は、真っ白な家具で揃えられ、センスの良さを感じさせた。
鞄を置き、窓の方へ歩み寄る。
レースのカーテンを開けると、透き通った海が視界に入った。
ほんのりと潮の香りが体を撫で、何故か体から余計な力が抜けていくような感じがした。