青のキセキ



「美空、何て?」

一通り話終え、美空と会ってきた筈の翔に聞いた。



「結婚して子供もいるって言ってただろ?」








「遥菜ちゃんは......」

翔の言葉を待つ。けれど、翔の口から言葉が発せられることはなく。



「やっぱりな...」


もう、美空には会えない。

もう、美空に会うことはない。



もう、終わったんだ。










「帰ろう」


美空に会う必要がなくなった今、この町に長居すべきではない。


難しい顔をしたままの翔に声を掛け、車のキーを手にすると、翔がそのキーを取り上げ、運転席に乗り込み、エンジンをかけた。



「おい、どうしたんだよ。お前が運転してくれるのか?」



俺が助手席に座ると同時、翔は俺の問いに答えることなく車を発進させた。


慌ててシートベルトを着け、翔の方を見たが、翔は何も言わず前を見つめたまま。


そんな翔を怪訝に感じながらも、俺は短く息を吐き、フロントガラスから見える景色をただ見つめていた。






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