青のキセキ
「そうか」


優しい貴方の声。


「家族が出来たと言ってたもんな」



課長があまりにも優しい瞳で私と碧を見つめるから、思わず泣きそうになった。震える唇。


漏れそうになる声を堪え、グッと下唇を噛み締めた。





「僕、名前は?」

屈んで碧と目線を合わせて聞く課長。

「...みどり」

恥ずかしそうに答える碧の頭を課長が撫でる。



「何歳?」




ドクン!と心臓が脈打つ。


ダメ...。気付かれる。


年齢を知られたら、気付かれてしまうかもしれない。


「あ、あの課長...私達、急いでて。バスの時間が...」

碧が歳を答える前に、慌てて言った。


「あ、あぁ。すまない」


碧に触れていた手を下ろし、課長が立ち上がる。





「碧、行こっか」

早くこの場から逃れたい。



動揺していることを悟られないように。

震える声に気付かれないように。


私は碧の手を引いて、歩き出した。








課長と翔さんの横を碧の手を引いて通り過ぎる。

背中に二人の視線を感じて、胸が痛い。



早く。早く。

ここから逃れたくて。



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