魔王と魔女と男子高生と
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「本当にひどい目に遇った……」

陸琉は横で呑気に
寝ている空砂を
見ながらため息をついた。
「何でこんな訳の
わからんことに
なったんだ」

陸琉は正直この状況を
夢だと考えていた。

だから眠って目が
覚めれば全てはリセット
されて普通の日常に
戻れると考えていた。

ーしかし

「いつまでも目が
覚めないなんて……」

深くもう何度目か
わからないため息を
ついた時、

『これは夢じゃない
からね』

脳に直接入り込む
ようにその女の声は
聞こえた。

思わず周囲を見渡すが
誰もいない。

『私の声はあなたにしか
聞こえないわ。
ねぇ、帰る方法を
知りたくない?』

女の声はわざとらしく
媚びるような響きを
はらんでいる。

「帰りたいに決まってる」
と口には出さず考えた。

『そうよね。なら帰る
方法は簡単よ。空砂を
殺せばいい』

「はっ?」

その女の声は媚びた
ものから鋭利な刃物の
ようなものに変わる。

『空砂を殺せば、
あるいは空砂が死ねば
戻れるわ』

「そんなこと……
俺は嫌だ!!」

陸琉は思わず叫んで
しまった。

そんなことは絶対に
嫌だった。

いくら、中2病を
こじらせていても、
頭がおかしくても、
陸琉にとって空砂は
親友だ。

親友……。

「うっさいはボケ!!」

陸琉はものごっそ激しい
蹴りを食らった。

そこには勝ち気な
美少女、リビアが
仁王立ちしていた。

「……すいません」

結局、陸琉だけ2回目の
説教を受けるはめに
なった。

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