孤独の戦いと限界
〜自室〜
『………』
罪悪感が重くのしかかる。
決断は間違ってはいない。間違ってはいないが、傷をつけてしまった事に、罪悪感を払う事ができない。
椎名、大丈夫だよな…
気になって、本を読む持続力が全く続かない‥。
『………』
風呂でも行こ…‥
…‥
‥
『あっ、兄さん…』
『風呂沸いた?』
『うん、沸いたとこだよ』
『1番風呂行かせてもらうよ』
熱い風呂でも入って、体を痛め付けたい。
何もしていないと、またウジウジ考えてしまう。
『…ねぇ、兄さん』
『ん?』
『今日、屋上で椎名と何を話してたの?』
『!、…見てたのか』
『その‥、風紀活動で廊下を巡回中の時に…』
『どっから見てたの?』
『‥椎名が屋上で、兄さんを待ってるとこから…』
全てか…
劇場映画を、演じてたんじゃないんだぞ。
見続けるのは、止めてほしかった。
『一部始終と言ってくれ』
『それで?』
『…想像に任せる』
『何があったか想像出来るけど、でも‥』
『………』
『………』
『い〜、やだ』
『な、何よ〜、その返事は?』
『俺が椎名の相談乗りたい時、友美は相談内容を教えてくれなかっただろ』
『あれは秘密にしてほしいって言われたし‥』
『俺も椎名とのプライベートを、公言したくないし』
『…ダメかな?』
『いいよ、解った』
友美には伝えなければならないしな…
恐らく、心中穏やかではないだろうし。
…‥
‥
『お待たせ〜』
俺は既に風呂を上がり、携帯ゲームで遊んでいた。
『はい♪』
俺から携帯をもぎ取る。
『何すんだよ、大富豪だったのに‥』
『トランプ?』
『オンライン対戦用の、ね』
『兄さんは?』
『大富豪』
『都落ちするのを防いだんだから♪』
『まぁ、大富豪のカードじゃなかったから、多分負けただろうね』
『でしょ♪』
『ああ…』
『………』
『………』
友美はソファーに座り、俺の表情をうかがう。
俺は自然と、視線を避けた。
『…正直、聞くのは怖い気もするけど』
『…友美の方が好きだから』
『!、それって…』
『うん…、だから想像通り。椎名を傷つけてしまったけど、こればかりは譲れない』
『…兄さん』
…‥
‥
放課後の出来事を、全て話した。
『………』
椎名の気持ち、決意、そして俺の答え。
『友美を選んでいたから、こればかりは優柔不断になりきれない‥』
『‥兄さん、つらかったよね。私が言うのもおかしいけど』
『…友美と一緒に居たい。それが俺の答えだから』
『‥うん、でも椎名は?』
『‥俺はけじめをつけたつもりだけど、やっぱりいけない判断かな』
苦しい、胸が痛む…。
胸を手で押さえて、俺のとった判断を考えてみる。
これだ、という答えはわからなかった。
『ごめんなさい、今のは失言だよ』
『………』
『でも‥』
『?』
『ありがと♪』
うっすら涙ぐむ友美。
俺の心労でも伝わったのだろうか、それともこれからの新しい二人の道が開けたからだろうか。
『第二の人生の始まりってやつだね』
『うん♪』
『………』
幸せが長く続くなんて限らない。
変化、流動的に二人にもたらす何かが出現する。
それは人生で学んだ事だ。
この幸せがいつまで続くか、もしかしたら続かないのかも…。
『………』
頭をブンブンと振り、一抹の不安を拭い取り、友美を強く抱きしめにいった。
『…ちょっと力が強いよ』
『あ、悪い』
『ふふっ♪』
『フフっ♪』
久しぶりに吹いた。
最近、笑う機会の少なかった俺には、凄く心地よかった。
…‥
‥