恋の献血センター
 朱美は彼がアル綿で押さえた注射跡を上から押さえ、ぶんぶんと頭を振った。

「他の血液なんて、普通にいつでも手に入るでしょ! だったら特別、美味しい飲み方しなくてもいいでしょっ。いつでも飲めるんだから! 私の血液は、ただでさえ特別なんだから、飲み方も特別にするの!」

 何だかめちゃくちゃな理屈だ。
 だが彼は、ちょっと首を傾げて頷いた。

「そっか。それもそうだね。わかったよ」

 にこ、と笑う彼に、また朱美の胸は早鐘を打つ。
 それを打ち消すように、朱美は少し邪悪な笑みを浮かべて、彼に言った。

「私の血、貴重だから、そうほいほい飲まれても困るのよね。だから、成分献血にします」

「・・・・・・えええええ~~~??」

 小さな献血センターに、吸血鬼の悲痛な叫び声が木霊した。


*****おわり*****
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