神さまに選ばれた理由(わけ)
日曜日の午前11時インターホンがなった。
先生は兄と主人の計らいで兄の家にやったきた。
兄夫婦が対応してる。「先生だ」私は心臓が爆発しそうなくらい落ち着かない。
昨夜もよく眠れず2,3時間眠ったろうか・・・・・そのせいでお化粧も思うようにのらず
せっかく姉からお化粧して貰ったのにいつもと一緒。・・・・・・・・
兄が「みおーっ」と呼んだ。
「はーい」とは返事できない私は玄関まで壁を伝って歩いた。姉が手を貸してくれた。
姉は初めて見る先生にニコニコしてる。「先生ってどんな人?」姉には散々聞かれた
そのたびにおしゃべりな人、子供みたいな人、まっすぐな人など自分の思い出残るエピソードを
交えて話してきた。
私は先生の顔を見ただけで
もう歩きながら泣いていた。先生の前までくると姉は私の手を先生に渡した
「自分でまだ歩けてるなんて偉いじゃないか」そう言って私を引き寄せた
「リハビリがんばってるもん」言葉にならなかった。
でももう私は「愛してる」とは言えないようになっていた。
「じゃお兄さん、時間がもったいないので行かしてもらいます。明日の昼までには必ず帰って来ますので。
「ああ、ゆっくりいいよ。2年も待ったんだから。哲也くんも今日のことは承知の上だ。」
「まずはコーヒーのんで行かない」姉の入れてくれた珈琲を4人で飲んでからドライブに行く予定だ。
「安全運転でね〜」

車椅子を先に積んでから先生の車の助手席に乗った。
車は阪神高速を東京方面に走り出した。
「どこに行くの?」「京都」
「君がもう1度行きたって言ってた嵯峨野の竹林 僕が車椅子押すから一緒に見よう」
嵯峨野を歩いたのは20代前半の頃。竹林の美しさとかわからなかったけど、
今訪れるとそこは陽の光を遮りお厳かな雰囲気を醸し出していた。
嵯峨野に広がる竹林の道。
青竹に囲まれた世界の中、風はひんやりと涼しく、私たちを静かに迎えてくれた。
凛と伸びた青竹は美しい。古の昔からその普遍的な美しさは変わらない。
「寒くはないかい?車椅子のスピードはこれくらいでいい?」
「うん。どっちも大丈夫よ。先生の顔が見えないのが玉にキズ・・・・・」
「澪さん言うねえ~照れるな・・」「あらほんとよ。2年も我慢したんだもの」
「そうだな。今日は澪さんと出会ってから今日までのことを話そうか。
特に澪さんの知らない僕だけの時間のことを・・・・・」
「うわあ、聞きターイ」
先生は静かに語り出した。 
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