秘密の時間



優しい眼差しはいつもと変わらないのに、なんだか今日の彼は疲れて見える。



ふうー、と吐き出される吐息はいつもとは違い苦しそう。



「あのー」


「そう言えば、美優は晩ごはん食べたの?」



突然思い付いたかのように話し出した彼は、私の言い掛けた言葉など気が付いていないようで、私も突然言われた彼の言葉に思わず黙り込んでしまった。



「まだ、だろ?だったら一緒に食べるか。
せっかく美優が作ってくれたのに、食べずに寝るなんて、…勿体ないよな」



最後の方は一人言でも呟く様に彼はそう言った。




「あのー、部長…」


「美優、部長じゃあないだろ?」


「…………」



彼はそう言いながら、寝ている私をそっと抱き起こした。



「……美優」



そして、私を腕の中に閉じ込めて、いつもよりギュッと強く抱き締めた巧さん。



やっぱりいつもと違う気がする。



なんなんだろう?



虫の知らせ?



とにかく、それでも私は彼に何も聞くことが出来ない。



彼が何を悩んでいるのか?


彼が何を思っているのか?










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