秘密の時間



そこまで一息に話した巧さんは、ほんの少しもの悲しさを滲ませていて、


けどそれは、私じゃあどうにも出来ないんだと、何となく分かっていてしまった。



けして幸せだったとは言えない巧さんの結婚生活。



そして、咲季さんを想い話してくれた彼の過去の苦しみや悲しみはきっとこれからも巧さんひとりで背負っていくのであろう。




そしてそこに私は居ない。



きっと彼の性格からして、そうなんだと思う。





「あの指輪を外せなかったのは、


咲季に対して何もしてやれなかった俺の戒めなんだ。


俺はもうずっと一人でいいと思ってた。


きっとまた同じ事を繰り返してしまうような気がしたから。


でも、美優。


美優を見てて思ったんだ。


『美優の事、守りたい』って。



いつも一生懸命で、穢れてなくて、どこまでも真っ直ぐな美優が見てて羨ましかった。


そんな奴見てたら、このまま穢れなく素直な美優のままで居て貰いたいと思ったんだ


そう思えたのは美優だけなんだ。



だから、美優……」











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