放課後ワルツ





「……帰ろっか」

私がそう呟くと、早瀬の腕が身体から離れた。まどろむような温もりから解放される。


……それが名残惜しい、なんて。


「早瀬ありがと。ごめんね、こんな時間まで付き合わせて」
「いーよ、別に」

屈託のない彼の笑顔が、しんみりとした心にふわりと沁みた。


花のワルツが静かな校舎に響く中、机上のプリントやらお菓子やら缶やらを片付けて、全開にしていた窓を全て閉めて。

家に帰ったらまたひとりだな、なんて子供じみたことを考えて。

鞄を持って教室を出ようとすると、早瀬が私の腕を掴んだ。

「親、帰り遅いんだろ?」

急にまた、そんなことを聞いてくる。

「……うん、まぁ」
「じゃあ、俺んち来る?」
「はい?」

突拍子もない提案に、思わず間抜けな声が出た。
呆然として早瀬を見つめる。

「課題の残り教えてやるから。お前ひとりでやったら、終わるもんも終わんねーだろ」

にやり。

人を小馬鹿にしたような笑みが癪に障る。





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