シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
それは演技だとか本当だとか、そんなことがどうでもよく思える程、芹霞さんの心からの叫びのように思えたから。
人情に厚い彼女なのに、"約束の地(カナン)"爆破されたことについて、私が思っていたよりもあっさりとした反応を示していた。
心を切り換えないといけないのは判っていても、櫂様にそれ程までの執着がなかったにしろ、久遠という存在を目の前で壊された。
生きているのが判ったにしても、危険である事実には変わりなく。
例え久遠もどきのネコが傍にいるからといって、全てを過去に出来る程昔のことでもない。
その抑圧された心(フラストレーション)が解放された時、それはどんな形を伴うのか。
「あんたは、皆を殺したかったの? そこまで憎かったの? ねえ……紫堂くんへの怨恨が、どうして他の者達を巻き込む結果になったの? どうしてあの時……。ヘリの中で、笑ったのよ!!!」
芹霞さんは苦しそうな表情をして、時折頭に手を添えるようにしていた。
頭痛でもするのか。
「人として!!! 忘れてはならないのは、心でしょう!! どんな生き方をしようと、あんたは心があるはず!! その心を捨てて、必死に生きようとしている人を地獄に落として、なんでのうのうと自分の生だけを訴えられるの!!? 被害者面しないで!!」
玲様が芹霞さんの異変を感じて足を前に出したと同時に、芹霞さんは玲様に振り替えらずして、手にしていた化けネコカバンを手渡し、そして……久涅の黒い外套を両手でぐいと掴み上げた。
その動作は、一瞬のこと。
久涅本人も驚いた顔をしていて。
「傷ついた人なら、痛みが…判るんだよ……? 死にかけた人なら……死が怖いんだよ……? なのに……どうして……人のことは……お構いなしなのかなあ……?」
芹霞さんの目にぶわりと涙が膨らみ、それを片手の甲で拭うと、再びきっと久涅を睨み付けるようにして言った。
「犠牲になった皆を、元気な姿で戻してよ!!! 五皇だということを自慢したいのなら、再生させてみせてよ!! 時間を戻して!!」
「……芹霞」
「玲くんは黙ってて!! 玲くんは優しすぎるの!!」
ぴしゃりと芹霞さんは言い放つ。
「あたしは――っ!!
久遠だけではなく――
二度も櫂を助けられなかったのが、悔しくてたまらない!!」