シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
γ↑Sµγ→SµK◎γ←SµCH□R●CH◇γ□
「正直、ドア以外の記号の持つ意味や法則性は僕もよくわからないけれど、ドアは幸いにも5つしかない。とにかくドアを開けて階段を探して、そこから記号の…暗号の意味を拾った方が早い」
リスの歌の歌詞から、暗号における記号の意味を拾ったように。
結果から、ルールを見つける。
起点から最初にあるドアは、暗号で言えば「◎」。
このマークは8行分あるから、階段が隠されている可能性が一番高い。しかし最初ということがひっかかりもする。
桜がドアを開く。
やはりがらんとした、奥行きがある石灰の壁だけの空き部屋だった。
想定内とはいえ、軽い落胆を覚えてしまう。
「ドアが……左右と奥3つありますね。暗号の矢印の向きもまた3つ。ならばどう正解を読み解くかを検証するため、まずは先程と同じ、奥から行きましょう。この先に階段がなければ、その奥に続くドアからは反対側の廊下に出るはずです。推測上」
円環状の廊下が取り巻く中心部は部屋2つ分のスペースなのだと思えばこそ、一番最初に辿った方向から潰すのが、最短だと。
桜の意見は適確だと思えたから、まずは奥からの確認に入った。
桜が奥にあるドアを開ける。
……え?
「この部屋……やけに小さくない?」
僕が抱えたままの芹霞が代表して口を開く。
それは人が横ふたり分のスペースしかない狭い部屋で。
しかも――、
「ドアは左右に2つで、奥にはドアがないねえ」
廊下に続くはずのドアがない。
桜が僕を見た。
「玲様、先程はたまたまドア数も少なく、似たような部屋が並んでいただけで、実際の部屋は大小異なり、設置されたドアの方向も複数で一定していない可能性が高いですね。全てのドアを開けて進むために、地図を描いていきます」
つまり、迷路化していたものは、抜け出れない円環の廊下にあるのではなく、その中心部にある部屋の方だったらしい。
たまたま初見が、恵まれたものを選んでしまっただけで。
部屋の数はいくつあるのか判らない。
ドアの数はいくつあるのか判らない。
気分はまるで、RPGゲーム王道のダンジョン攻略。
マップは桜が自動書記。
階段を目にするには、最低何回ドアを開けないとだめなんだろう。
単純に終わると見越していた僕は、認識の甘さに苦笑する。
複雑に入り組んで構成された、多くのドアと大小様々な部屋。
僕が主張するまだ見ぬ階段を求め、流浪している僕達。
これで階段がなかった…なんて事実が見えたら、僕は皆に顔向け出来ない。
階段が早く見つかることを誰より切に願わずにはいられない。
「あたし……地図あっても、迷いそう…」
「葉山の地図見ていたらなんだかボク、電子基盤の模様みたいに思えて来ちゃった」
電子基盤という表現をした由香ちゃんに、思わず僕は失笑してしまう。
「だとすれば、電子基盤で惑う僕達は――
まるで0と1……電気信号のようだね」
0と1の動きは、電子基盤という世界に大きな力を与える。
しかし僕達は、人は……0と1の秘める力には勝てない。
0と1は人という個体の生死をも支配出来るけれど、人は0と1を支配することなどできない。
力も世界も次元が違う。
人が出来るのは、せいぜい0と1を模倣するくらい。
凌駕できると思っているのなら、それは傲慢だ。
身の程知らず。