シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「セコンド!!」



カーン。


「ああああああああ!!」


頭の中の鐘の合図で、吠える俺から放たれる赤い光が急速度で真上に伸びる。

そしてそれはチビを捉えたような感覚があった。



「なにこれ、きゃあああああ!!」

「悦ぶな、真面目に発動!!」

「り、了解!!」



バリバリとした音と青い稲光が、下に落ちるではなく…真上に向かった。

赤色と青色が混ざり、紫に変色した光は四方八方に拡がり、やがて果てなく見えた世界の途中で不自然に止まると、地殻を震わせるほどの激震を生んだ。


そこが――

俺達が閉じ込められた世界の"限界"か。


ならば、突き破るまで!!



強さを増す紫の光。

あんなチビだって頑張っている。



「俺だって!!!」


――煌。


不意に、どこかで櫂の声が聞こえたような気がした。


きっと櫂の激励に違いねえ。


たとえそれが幻でも、俺にとっちゃ頼もしい援軍だ。

櫂の信頼を、裏切るものか!!


「いっけええええ、チビぃぃぃぃ!!!」



バリバリバリバリ…。



やがて――


「よし、行った!!」


俺の声と共に、なにかが割れる音がした。



硝子のような細かい破片が、きらきらと煌めきながら降ってきては、消えて行く。

これはスクリーンの一部なのだろうか。

まるで涙のように儚い、幻想的な景色だった。



「………」


その中、破片を避けるような見事な飛行術を見せて、悠々と降りてくるのは、これまた幻想的なムササビリス。

情緒の欠片もなにもねえ。


無言でいる俺が差しだした掌に、当然のように二本足で着地すると、やはり"袋"を体内にすっとしまって、何でもなさそうな顔で、壊れゆく空を見つめた。


背中越しに聞こえる、チビの堅い声。

凛々しく成長したかのような、男らしい玲の声。


「ワンコ。"高い高い"の間、僕見たんだ。地面、ゆっくりだけどくるっと廻ってた。ありえるんだね、そんな非常識なこと。……僕、大人になったよ」

「……大人が言うなよ、"高い高い"って。それに――。地面が廻るより、お前の方がよっぽど非常識だぞ?」

「それは過去のことさ」

「いや、現在進行形で。つーより、お前認めてたのかよ、自分が非常識だって」


チビの返答を待たずして、バーンという大きな破裂音が鳴り響き、俺達はそちらに気を取られた。
< 1,251 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop