シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


直後、直の煌の大声が響き渡った。


「牛女、お前生きてるか!?」

「生きてるよ、だけどまだかい!? さすがに疲れてきたよ!」


『あいつの疲労も普通な感じだよな。だとすれば、平気なのは俺と櫂と小小々猿とチビサクラ?』


どうして術者の翠が異常を感じていながら、その影響を受ける式神と受けない式神にわかれるんだ?

『おいチビ、お前無理だって。顔色は判らねえけど、毛も尻尾の艶が全くねえんだぞ。ちょっと今会議している間でも、休めって』


事態は、急を要している。


『俺、吉祥ちゃんに頼んで真上から回復の波動を流して貰うよ』


そんな翠の声と共に、光り輝く吉祥が空高く舞い上がり……光の波動を広げた。

これで、少しはレイの回復になればいいが――。


周涅の術を破るには、レイの力が不可欠だ。

そのレイが変調をきたしている。


どうする?


レイが完全に倒れてしまう前に、奥義を発動させるのか。

それともレイが回復するのを待つ方がいいのか。


――ふふふ、僕なら大丈夫。行こう?


玲なら絶対笑いながらそう言う。

そして玲なら、俺は必ずこう答える。


"玲の体を最優先だ"


俺は、レイに強いることは出来ない。

どんなに本人がやる気でも、見殺しには出来ないから――。


『チビ、おいチビ!? お前すっげぇ衰弱してねえか!? は!? 僅かの間に消耗が激しすぎないか!?』

『やば……。紫堂櫂、俺も力が……』


「なんでだ!? 吉祥の回復術があるのに、なんで効かない!?」


俺は平気なんだ。

異常を感じるのは、限定された者達だけ。


そこに、作為的なものを感じずにはいられない。

これは……罠か?
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