シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「ゴボウちゃんのことを悪く言うな!! すべては…ああ、力ない俺のせいだよ!! だけどゴボウちゃんはそんな俺を主だって言って消えたんだ!! ゴボウちゃんは……俺の大切な友達は!!」


飲み込む。

翠に向かわれる吉祥の力を、翠は飲み込んでいく。

どこまでも吸収する翠は、結界を強めた吉祥の首もとを片手で掴んだ。


どんな結界もものともしない、それはまさしく……翠の貫通の力。

それでも抵抗する吉祥に、俺と煌の力で、枷のようにその四肢を縛り上げた。


しかし主導権があるのは翠。

俺達の力は、翠の深緑色の力によって支配されているのがわかった。


その力の加減は翠次第。

俺達はただ力を抜き取られているだけ。


そして翠が制御した力は、混沌としたエネルギーとなり、この位置からでもびりびりと肌に感じるものとなる。


かつて――

初めて見た、緋狭さんの力を思い出した。


あの時俺は、その凄まじさに畏怖し、そして憧れた。


タイプは違うけれど、それだけの力の大きさを、翠は作り出している。


凄い、翠の力は――。


俺の中に眠る好戦的な血が、ざわめき出す。

今この瞬間に立ち会えたことが嬉しくて仕方がない。


負けるものかという気になってくる。


なにが出来損ないだ。


やはり、翠の潜在能力は大きかったんだ。


最後まで翠を崇めて散った護法童子は、最初から見抜いていたのか。


それをどうして周涅が見抜けなかった?

朱貴ですら、見抜いていただろうに。


護法童子が消えて、翠が怒りに覚醒したのだというのなら。

それで吉祥に向かえる力を持ったというのなら。


それこそ護法童子が、尊敬する主への"恩返し"なのだろう。


護法童子も、もしかすると吉祥を抑えられたのかも知れない。

しかし、レイの命となり消えることを選んだ。

その結果が、今の翠がある。

吉祥を抑える方に力を回していれば、翠は動かず傍観者でいたかもしれない。

その力が目覚めることなく。


翠の力が目覚めたのは――

俺や煌の力ではなく、堅い絆で結ばれていた…主従の力だ。


そこに少し妬ましさを感じるけれども。


例え護法童子は消えようと、それは翠の力となって生き続けている。

翠が作り出した式神の命は、翠の力となって循環しているんだ。


巡り巡る――

全ては俺達が願う未来に向けて。


その中に響き渡る声は、悪意を孕んでいた。


「やるならやれよ。それで俺が死ぬわけではない。死ぬのはお前の式神だ。続けて二体、殺してみろよ? お前の友達を」


笑う。

笑う。


姿なくとも、周涅の害意は耳から体内に流れ込んでくる。



「結局は、吉祥を従えない限り、肝心要のあの野良リスの力も使えまい。


死に損、力の出し損。

――手詰まりだ」


「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!」




そんな時だったんだ。


『告知します。アップデートが完了しました』


そんなニノの声と共に――



「は!? チビ!? どうしたんだ、チビ!?」



煌の慌てた声がしたのは。


レイがどうしたんだ!?




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