シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「櫂はん…連れていくのは…ワンワンはんだけで?」
アホハットが言った。
"裏世界"、か?
「ワンコも行くなら俺も!!!」
小猿が挙手をするけれど。
「お前な、遠足に行くんじゃねえんだよ!!!」
「何でワンコはよくて俺は駄目なんだよ!!!」
「お前、自分と俺を同列に考えるなって。裏世界は怖い場所だぞ!!? 生きて帰れる保証はないんだぞ!!? お前世間知らずの、皇城の坊ちゃんだろうが!!!」
「聖!!! ワンコがいいなら俺だっていいよな!!!?」
駄目だ、全然人の話聞いてねえ…。
「う~ん。ワンワンはんは"特殊"やからなあ。翠はんは…う~ん。翠はんは…う~ん、う~ん…」
「何でそこで、そんなに考えるんだ!!? 別にいいだろ!!?」
ダンダンと足を地面に叩き付けながら、小猿は甲高い声を出した。
「待て…」
人差し指を上に上げてそう言ったのは、考え込んでいた櫂で。
「翠。お前も来い」
怜悧な瞳を小猿に向けた。
「あ!!!? 小猿もか!!!?」
こんな世間知らず…すぐに死んじまうだろうよ!!!
「ああ。翠、お前はきっと…皇城で、皇城権力者の雄黄によって庇護され続けてきたんだろう。綺麗な世界を見過ぎてきたお前は、掌を返した雄黄の態度によって、厳しい現実と戦うということよりも逃げ出す選択をした。
だが…いつまでも幻想の中に逃げ続けてはいられまい」
「逃げ……うっ…」
小猿は言葉を詰まらせた。
「桜から話は聞いている。今、朱貴と七瀬が窮地だというのなら、それを助けたいというのなら。七瀬と繋がるだろう玲の元に遣わせたとしても…周涅や雄黄からいいように使われ、逆に玲と七瀬、そして朱貴の足を引っ張ることにもなる」
「…うっ……」
「お前は…まだ1人立ち出来る強さはない。もしこのままぬくぬくとした心地よさだけを追い求めて、辛さから逃げ続けるというのならば、誰かに"寄生"し続けているお前は、宿主を失えば生きていけなくなる。その喪失感だけは…お前に味あわせたくない」
辛辣でありながら、それは心に訴えるような切なる響きがあって。
まるで櫂の体験談のような…そんな哀切なものを感じた。