シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そこまで考えてくれている、優しい猫なのかなあ、クオンは。

どうも優しさが見えてこない。


出会って早々、病巣に猫パンチ連続攻撃していたくせに。

まさかあれ…叩くことで病原菌を撲滅させていたとか!!?


その時、クオンが飛び起きたと思ったら。


ガタンッッ。


地震のような横揺れが屋敷を襲った。


更にもう1回。


その後は、何もなかったようにしんと静まり返っている。


今までバタバタと慌しい屋敷だったから、こんな明らかな衝撃があったというのに、しんと静まり返っていることが不気味すぎて。


「屋敷の…気配がおかしいですね…」


突如桜ちゃんが険しい顔をした。


「静かすぎて…人の気配が感じられない。少し前まではそんなことはなかったのに…。

それに…副団長もこない。玲様や私の頼み事には忠実に遂行してくれるあの百合絵さんが、伝えてないということはないはずなのに…」


百合絵さんは、有言実行の女性だったらしい。

人はみかけにはよらないものだ。


「…師匠も帰り遅いね。1時間は経つよね」

そう由香ちゃんが呟けば、


「玲様…」


桜ちゃんが心配そうな顔をした。


玲くんは強いから、何かあっても大丈夫だとは思うけれど、何せ彼には持病があるし。


だけどそれより…何か気になる。

直感というもので。


毒を盛った奇妙な蛆男の出現もそうだったけれど、あれだけで本当に終わったのかどうか…それも気になるし。

紫堂で一番強い当主が在宅なのに、蛆男の存在を許していたのは驚きで。

知らなかったのならそれはそれで問題だろうし、知っていたら知っていたで、当主公認の刺客ということになるし。

どちらに転んでも、あたし達にとっていい結果ではなさそうだ。


それに――…。

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