シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「はい、櫂。"あーーーん"。

ほら、いやいやしないの。お口あけて?」


何だか――

小さい子供を相手しているような気もする。


「……。櫂。あまりいやいやすると…嫌いになるからね」


芹霞の声音が変われば…櫂の動揺が、また伝わってきた。



その時、足元をチョコチョコ走る気配。


「ねえ芹霞、芹霞のものが嫌で食べれないなんて言う櫂はやめて、僕に食べさせて? 僕…芹霞の作ったものなら何でも食べたいんだ。ふふふ。はい、僕の大事な胡桃あげる。僕の愛だよ? 櫂じゃなくて、僕に食べさせて? ん…"あーーーん"。凄くおいしい。君の…愛だね。

ふふふ。やだな、そんなに優しく体をまさぐられると…気持ちよすぎて…たまらなくなるよ」


「「………」」 


「せり。オレがわざわざ材料もってきたんだから、出来上がったらまず最初にオレに食べさせるのが筋だろ? ああ、オレは猫舌だからな。ちゃんとせりの口でフーフーして冷ましてくれよ? 

…馬鹿せり!! ちゃんと飲ませろよ!! 口端から零れたのはせりのせいだ。せりがちゃんと責任もって舐め取れよ。

あー舌遣いまで下手くそだな、見本見せてやるから。こうだろ、こうやって舌で掬(すく)い取ればいいだろ!!? 発情メスのような変な声出すなよ!!」


「「………」」 


相手は…小動物とはいえ。


その声が久遠と玲であるが故に…

見えないが故に…


むかむかしてきた。


匂い以上に、怒りが…。



俺より先に動いたのは櫂で。


「俺に全部寄越せッッ!!!」

「あ、櫂…そんなにがつがつ…」


暗闇の中、食べているらしい。

咀嚼音と嚥下音が入り交じる。



想像だけれど…

皿を両手に…こう自棄になって、息をしないで一気飲み。

口で息をしながら、"何か"を食っている…


に違いねえ。

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