シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「僕の"しちゅ~"…」
「オレの"しちゅ~"…」
「黙れ!!! 俺の"しちゅ~"だ!!!」
時折、咳き込んでいるけれど。
ああ…。
あの悪臭放つ"しちゅ~"を、皆で取り合っているとは…な。
悪いけど俺…戦線脱落するわ。
俺…人参でいい。
「もう食べたの!!? 嬉し~!! じゃお代わりあげる」
「うっ…」
櫂…。
「はい、お肉も。もっとゆっくりちゃんと噛んで味わってね。もっとゆっくり、もっと…そう。うふふふ。おいしい? ねえ、おいしい?」
「あ、ああ…おい…しい…」
櫂の声が段々と涙交じりになってきて。
俺も…いじらしい櫂に切なくなってきちまった。
「アカ、15秒…視覚戻して~?」
『判った。15秒だな』
そして、ぱっと視覚が戻って。
「櫂、また後で食べてね」
にっこり芹霞が、四つん這い状態になった…げっそり櫂の元から笑顔で去って行く。
手の中にあるシュー皿。
その中にあった、櫂が半分囓ったような肉の塊…。
なんか…手…のような形してねえか?
豚でも鳥でもねえ…俺…あんな肉、初めて見たけれど。
エイリアンか…?
あいつ…本当に捌いたのか?
櫂…お前、腹大丈夫かよ?
『坊…マイナス10点』
「俺…何食った…?」
見ちまったらしい櫂は…
蹲るようにして座り込んだ。
「櫂…一度吐くか?」
俺が櫂の隣に屈み込んでそう聞けば。
櫂はふるふると頭を横に振って。
「我慢する…。
強くなるって決めたんだ…。
芹霞の食事…吐きたくない…」
若干…舌が回っていないけれど。
「じゃあ口直しに…人参食うか?
とにかく…あの味消した方がいいぞ?」
静かに潤んだ瞳を俺に向けた櫂は、俺が差し出した人参をうけとり、細い方を口に入れて、しゃりと噛んだ。
しゃりしゃり。
櫂が人参を食べている時、
『15秒経過。
視覚を奪わせて貰う』
また…闇の世界になった。
◇◇◇
《UnderWorld 006》