シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「僕の"しちゅ~"…」

「オレの"しちゅ~"…」


「黙れ!!! 俺の"しちゅ~"だ!!!」


時折、咳き込んでいるけれど。


ああ…。

あの悪臭放つ"しちゅ~"を、皆で取り合っているとは…な。


悪いけど俺…戦線脱落するわ。

俺…人参でいい。


「もう食べたの!!? 嬉し~!! じゃお代わりあげる」

「うっ…」


櫂…。



「はい、お肉も。もっとゆっくりちゃんと噛んで味わってね。もっとゆっくり、もっと…そう。うふふふ。おいしい? ねえ、おいしい?」

「あ、ああ…おい…しい…」


櫂の声が段々と涙交じりになってきて。

俺も…いじらしい櫂に切なくなってきちまった。



「アカ、15秒…視覚戻して~?」

『判った。15秒だな』


そして、ぱっと視覚が戻って。


「櫂、また後で食べてね」


にっこり芹霞が、四つん這い状態になった…げっそり櫂の元から笑顔で去って行く。

手の中にあるシュー皿。


その中にあった、櫂が半分囓ったような肉の塊…。

なんか…手…のような形してねえか?


豚でも鳥でもねえ…俺…あんな肉、初めて見たけれど。


エイリアンか…?


あいつ…本当に捌いたのか?

櫂…お前、腹大丈夫かよ?



『坊…マイナス10点』


「俺…何食った…?」


見ちまったらしい櫂は…

蹲るようにして座り込んだ。



「櫂…一度吐くか?」


俺が櫂の隣に屈み込んでそう聞けば。

櫂はふるふると頭を横に振って。


「我慢する…。

強くなるって決めたんだ…。

芹霞の食事…吐きたくない…」


若干…舌が回っていないけれど。


「じゃあ口直しに…人参食うか?

とにかく…あの味消した方がいいぞ?」


静かに潤んだ瞳を俺に向けた櫂は、俺が差し出した人参をうけとり、細い方を口に入れて、しゃりと噛んだ。


しゃりしゃり。


櫂が人参を食べている時、


『15秒経過。

視覚を奪わせて貰う』


また…闇の世界になった。




◇◇◇


《UnderWorld 006》
< 367 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop