シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ふむふむ。あそこを切り崩さないと連鎖も段消しも出来ないね。じゃあ怪力自慢の馬鹿犬からがいいね。僕は有終の美を華々しく飾らせて貰うよ」
そう言うと、煌の頭から飛び降りた。
「俺が先!!? ここはお前の力で、あそこを切り崩して俺に繋げた方が確実じゃねえか」
「だから馬鹿だって言うんだよ。お前があそこに入れないと、次に続かないんだよ。ね、僕の従弟?」
俺は苦笑交じりに、慌てる煌の顔を見て頷いた。
「まあ…櫂もそうだというのなら、そうなんだろうけどよ…。痛っ、足をカリカリすんな!! お前みたいなチビが、どうして一瞬で判るって…痛っ!!」
「なあ…紫堂櫂。あのリスのほっぺ…また一段と…"ぷっくぷく"じゃないか?」
「ああ。そう言えば…煌もだな。煌、どうした? 喧嘩?」
「……聞かないでくれ。このドMなリスとは違い、俺の心はブロークンハートにナイーブなんだ」
理解し難いカタカナばかり並べて、溜息1つ。
そしてオレンジ色の髪した幼馴染は、2つめの溜息を零しながら、頬をすりすり摩ってテトリス台にある、積まれたブロックを軽々と昇っていく。
そして――ブロックが落ちる気配。
「おうりゃ~、ストレス発散ッッ!!! これでも食らえ~ッッッ!!!」
落下したブロックを受け止めた煌は、そのまま反り返り…ブリッジを作るようにして、後方にブロックを放つ。
「凄えや…ワンコ。あのブロックを…ジャーマン・スープレックス…!!!? 背筋…半端なく凄え…」
「まあ…煌は常識外だからな」
さすがに俺、あんな派手な真似は出来ない。
"ストレス発散"
何があったんだろう?
テトリスで大量の段消しをする為のネックとなる部分が、煌が押し込んだブロックによって、一度に消された。
そこに二本足立ちしたレイが悠然と歩み寄ってきて。
ガンガンガン。
鉄の胡桃を隙間に埋め込んで、降りて来た煌を含めた俺達に振り返る。
「では皆々様、僕のショーをご覧下さい」
そう、片手を胸に置き、丁寧にぺこりと頭を下げた。
「「「ショー…?」」」
そしてレイは俺達に背をむけると、小さな両手を上に上げて、声高に叫んだ。
「サンダーボルト~
アタ~ックッッ!!!!!」
「その名は!!! 奥義を見せるのか!!」
反応した煌が声を上げた。
「奥義!!!? 何、何、何!!!?」
翠が食いついた。
そのネーミングセンスは、レイか? 玲か?
俺はそちらの方が気になった。