シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


煌…死ぬなんて許さないからね。

覚えているよね?

あたし達は一蓮托生だ。


あんたは、緋狭姉が手塩にかけて育てた…しぶとさがウリのミラクルワンコなんだから、特異な嗅覚で由香ちゃん達を守って、また元気な姿で再会しようね!!?


――馬鹿か、せり!!


久遠…。


――5日後、オレに会いに来い。


あたし達が久遠の元に行かねば、"約束の地(カナン)"は無事だったかもしれない。

久遠達を巻き込んだのは、あたし達のせいだ。

再生しかけた"約束の地(カナン)"を、また破滅させたのはあたし達だ。


罪は巡り行く。

――黙れ、せり。

どこまでも、どこまでも。


あたしは二度も久遠を、窮地に追い込んだ。

だけど信じよう。


土地が幾度も再生出来るように、久遠の命もまた途切れることはないと。

今は…呪わしき魔方陣の威力を、信じるよ。


そして再会を約束した久遠の言葉を信じる。


信じる。

皆は無事だ。


あたしの心は――

ぶれない。


ぶれちゃいけない。



「ある意味…」


玲くんが、身体を離しながら自嘲気味に笑う。


「櫂がいないのがよかったのか…」


「え?」


「衝動的にならずに、素早く心を立て直せるのは」


そしてあたしの反応を観察するように、じっと見つめていたけれど…意味が判らないあたしはきょとんとするばかりで。


「意味…判らないか。いいよ…僕の独り言だ」


玲くんは泣きそうな顔で微笑んだ。

あたしを信じさせようとする時は、強い"男"の顔をしてたのに…何で消え入りそうに儚い顔になるんだろうか。


「玲くんにとって、紫堂…くんは…」


紫堂櫂という名前を出した時、玲くんの身体がぴくりと震えた。


「玲くんは、紫堂くんが嫌いじゃないの?」


玲くんは即座に首を振る。


「君は誤解しているんだ。僕はあいつに助けられ続けてきたんだよ。感謝や愛情こそあれど…怨恨の類は一切無い。それだけは誓える」

「え? だけど、昔肩書きを…」

「どうでもいいんだよ、そんなことは」


玲くんは微笑んだ。



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