シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



僕は変わりたい。

僕は強くなりたい。


そうしなければ――

何も変わらない。



"約束の地(カナン)"が爆発しても、

僕は安全な場所に居た。


爆発させた犯人が目の前に居たのに、

僕は睨み付けることしかできなかった。


櫂だったら、こんな事態にはさせなかっただろう。


僕だから――

"約束の地(カナン)"は爆発してしまったのだろう。


悔しくて、口惜しくて…哀しくて堪らない。


全ては、僕が無力で愚かしいからだ。


本当は僕はあの時。


芹霞にフラれて――

惨めに恋を散らす気でいた。


櫂が苦しんだのなら。

それでも僕からまだ、芹霞の想いが消えていないのなら。


僕にとって最悪の方法で終わらせようと。


当主と久涅の前で――。


笑われるだろう。

馬鹿にされるだろう。


そしてそれを聞いている仲間にでさえ。


櫂をあそこまで傷つけて尚も自分の想いを優先する僕を軽蔑し、そして嘲笑するだろう…そう思ったんだ。


僕は惨めに散るから。

だからせめて最後くらいは…嘘をつきたくない。



僕は――…

"可哀相な"自分を見せることで、それを"自己犠牲"として少しでも"自己満足"しようとしていただけだけだね。


それで僕の恋が散ったら…何が変わる?


何も…変わらないんだ。


僕は散々人の心を掻き回して、自分勝手に消えるだけ。


更に…卑怯なことを僕はしようとしていたんだ。


こんなんじゃ駄目だ。

人として終わってる。


僕にしか出来ないこと、あるだろう?

しないといけないこと、あるだろう?


僕は――

これ以上、卑怯になりたくなかった。


それを気づかせてくれたのは、

櫂のメッセージだった。


櫂は僕に…信じさせてくれた。


僕に…"この先"があることを。

僕達は終焉していないことを。


櫂は…未来に繋げてくれたんだ。


< 67 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop