シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「えいえいえい!! こっちにもあっちにも、鉄の胡桃をえいえいえい!! とりあえず沢山えいえいえい!!! …ふぅ…ちょっと休憩」


カリカリカリ…。


「はぁ…出来るオスは、忙しいなあ。だけど僕、愛に戦いに頑張らなくちゃ。よし、今度は奥義発動するぞ!! サンダーボルト…あれ? 力がまだ元に戻ってないや。ああ、まだゲージが回復しきってないのか。奥義はMAX消費だもんな…。仕方が無い、ひとまず体力戻るまでカリカリしよう」


カリカリカリ…。


………。


例外なのはリスくらいだろう。

此処でも"れい"は例外か。


こいつの取り柄は、へこたれないトコロだ。

まあ…ヘンテコ動物だし?

つーか、ゲージとかMAX消費って何だ?


「煌…この速さなら力も銃も意味ないな。今は敵の動きに身体を慣らすためにも、素早く動ける体術や武力に頼るしかない」


流石は櫂。

今の俺達の力の限界を判っている。


「了解」


今の俺達には、敵をねじ伏せる力の強さはあれども、俊敏さはねえ。


力に驕ることなかれ。


俺が緋狭姉から炎の力の指導を受けていた時、何度も何度も言われていた。


――よいか。その威力は普通人に比べてはまずまずの出来だとも、五皇のレベルからすればまだまだなのだ。お前も、玲も、坊も。力を理解していない。


――そう思えば、力に対して愛情がある玲が、一歩だけ…お前や坊にリードしているやもしれぬ。0.001ポイントの差で。だが坊が闇の力を使い始めたら、玲に逆転するかもしれぬなあ。


愛情、ね…。


――闇は…芹霞に捧げた力だ。一生…自分の為には使用することがないと思っていたものだし、芹霞以外には使いたくない。


闇=芹霞とする櫂の愛情は判るけど、俺は玲のように0と1を愛するオタクにはなりたくねえよ。


俺の手には、偃月刀。

力で薙ぎ払おうと巨大化していた形は、素早さに対抗出来ないと小さくしていたけれど、逆に不都合を感じていた。

至近距離には強いが、中間~遠距離にかけて捉えきれねえ。

至近距離は攻撃を受けるリスクが非常に高く、守備力が落ちるから、一定の距離を保てられる棒術に切り換えた方が得策だ。


そう思った時、偃月刀は形を変え…先端が蛇のようにうねうねとした形に変わる。


「ワンコ、凄えッッ!!!」


小猿から声が上がる。


「また出したか、蛇矛を」


櫂の笑い声も聞こえた。


最近の俺の太陽石(サンストーン)は、大盤振る舞い。

あんなに念じても、偃月刀の大きさを変えられなかった昔が嘘のよう。


どうしたんだ、太陽石。

魂胆でもあるのか?

後で…玲みたいに何か請求されねえよな?
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