シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そんな時思い出した。

俺が手にかけた芹霞の母親も、ウジガミと口を動かしていなかったか?

――ウジガミサマ。


あれは俺を見て言った言葉なのか?

芹霞の母親もウジガミってのを知ってたのか?


一体何処まで有名なんだよ、ウジガミ。

芹霞の母親に様付けされるなんて、何処まで偉い奴だよ。


ナンデオレがウジガミダトワカッタ?


――妾達の教典『ヨウシュノヒミツ』におけるメイシュ。


こけし達の経典となっちまう程のメイシュ・ウジガミ。

おや、ヨウシュとは誰だ?

メイシュの血縁関係にあるのか?

ヨウシュの秘密なんて…恥ずかしい日記か何かか?

うわ、そんなもん信仰してんの、こけし達。

ヨウシュが「メイシュ・ウジガミ」と関係あるんだとしたら、そんな奴らに崇められる俺って…もしかして凄く恥ずかしい奴!?

それで有名だとか…?


え?

表世界に居るよりも、この世界に居た方が俺、ハズい存在!?


マ ジ デ ス カ。


「判りやすいな……」

「ああ。煌は見ていて飽きないだろう」


気づけば、腕を捲ったままのこけしと櫂が、色々考え込んでいた俺をじっと見つめていた。


「な、何だよ!! 俺だって考えることはあるんだよ。で、俺は…クォーターか?」


単刀直入に聞いてやる。

顔を顰めたこけしに代わり、櫂は気だるげに頭を振って言った。


「メイシュは人の名前ではない。盟主…同盟の中心者のことだ。ちなみに、ヨウシュはメイシュの親戚ではない。妖蛆…それはあの白い蟲…蛆のことだ」


………。

は?


「ウジガミは…蛆の神だ」


俺神様の縁(ゆかり)のある奴なんだ!!

…なんて能天気に考えられる程、俺はめでたい奴じゃねえ。

何でそれが蛆よ?


俺、今まで散々周りから、馬鹿犬だの駄犬だのワンコ扱いされ続けてきたけれど、今度は…蟲!?

しかも…蛆だと!!!?


俺は"約束の地(カナン)"の魔方陣で、担当した悪魔を思い出す。

あの時は"蝿男"だったはず。


それでも"蝿男"はあくまで概念であって、だから俺の出生が関わっているらしい今の"蛆男"の方が、意味合いは大きい。

蝿と蛆が無関係じゃない処が、また憎らしい。


「マジ?」


こけしは頷いた。

………。


「やべ…泣きそう」


俺は片手で顔を隠して項垂れた。


それなら俺…ワンコの方がいい…。


「蛆、でかっ!!」


小猿の声がした。

特別に気味悪がっているわけでもねえから、ただの突っ込みなんだろうけど。


「お前は…いいよな。サル…可愛くて羨ましいよ。俺…蛆だぞ、よりによって嫌われ者の蛆!!!!」

「くくくく。蛆ワンコ。図体でかいのに、蛆だって。お前小心者だからじゃないか? オレンジ蛆ワンコか…何だか汚いよね、くくくく…あうっあうっあうっ」

「……。その汚い蛆の頭の上に勝手に戻ってきて、何笑うよ」


腹立つからトリプルデコピンだ。

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