いじめのその先

再び手摺りに手を付き、空を仰いだ。青く染まった空にときおり風が吹いている。

そんな風に気持ちを落ち着かせながら、再びゆきに向かって心の中で解いてみた。


「そいつはダチなのか?」

「へ?」

ふいに月島君が聞いて来た。自分でも間抜けの声を出してしまったと後悔した。
しかし『後悔先に立たず』と言ったところ。月島君はまるで笑いを堪える様に聞いてきた。

「…んで、どうなんだよ?」

「そう…だね。友達よりは親友に近いかも。1番の仲良しだったから。」

「だった…か。」

「…うん。」

それ以降黙ってしまった月島君を横目に見ながら、私は咲枝ちゃんのことを考えていた。

お兄さんのことはどうにかしたかった。きっとその人のせいで誤解が生まれ、クラスであんなことが起きてしまったから。

「お前は咲枝のことどう思う?」

月島君っていつも唐突だな。そんなことを微かに思いながら、彼の質問に答える。

「どうって?」

「あ~だから助けるかどうか。」

「そりゃあもちろん…」

『助ける』

そう言いたかったが私はためらってしまった。それは以前咲枝ちゃんから言われたから。

「これ以上関わらないで。」

それは私を巻き込みたくなかっただけ。そう思いたいのに咲枝ちゃんの姿がゆきと重なる。

きっと私が余計なことしなければゆきは助かったかも…。
そう思うと『助ける』の一言が言えなくなってしまう。

「ーい」

ゆき…

「おいっ!!」

誰かの声でハッとして顔を上げると、月島君が心配そうな顔で私を見ていた。

「あ…」

「急にどうした?大丈夫か?」

「あぁ…うん。」

曖昧に返事する私に、彼は怪訝そうな顔で、しかしどこかホッとする様な表情をして正面の空を見上げた。

< 57 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop