カプチーノ·カシス
二つの大きなビルに挟まれてその存在はほとんど目立たない、小さな三階建てのビル。
その二階の小さなバーが、いつもの待ち合わせ場所だ。
重たい扉を引いて、ジャズの流れる店内を、一歩一歩ヒールを鳴らしながら進む。そしてカウンターの前に座る見慣れた背中を見つけると、あたしの体温とパンストに押し込められている下着の中の湿度が一気に増した。
「――ギムレット」
彼の隣の椅子に腰を下ろしながら、バーテンダーに告げる。
すると隣でククッと笑うのが聞こえて、あたしは今日初めて彼と目を合わせた。