カプチーノ·カシス


「うぅ……最近冷えるなぁ」


少しだけ残業をして会社の外に出ると、すっかり冷たい夜の空気が、もう十一月なんだということを思い出させる。

時刻は七時を過ぎたところ。

あたしは人と会う約束をしていて、会社から少し離れたバーへ向かって歩き出す。

トレンチコートのポケットに手を突っ込み、顔を隠すようにコートの襟に顎を沈めた。


――片思いは、ツラい。

一人で居ることを楽しめる完全フリーの状態と違い、相手を思って寂しくて仕方のない夜を何度も過ごさなければならない。

そしてあたしは、ただひたすら課長を想う一途な自分に酔うほど子どもじゃないし、恋心をただ胸に秘めて心静かに過ごせるほど大人でもない。


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