カプチーノ·カシス


「……女子社員がきみにキャーキャー言う気持ちが分かる気がするよ」


そう言っては悪戯っぽく微笑んだかと思ったら、課長は次の瞬間、いきなりハルに抱きついた。


「ちょっ……何ですか!?」

「いや、ほんとにイイ男だなと思ってさぁ……」

「俺は男に興味ありません」

「そう言うなって」


決して若くはない大の大人が二人、じゃれ合う姿がなんだか可笑しかった。


聞けば、ハルが会議室に持って行ったのはベトナムロブスタの配合を多くした試作品で、課長の用意した試作品とそれを飲み比べてもらったことで本部長を納得させることができたらしい。

ハルが行くまでは、勝手に指示と違う商品を作ったことをずっと責められていたと、課長が苦笑しながら教えてくれた。


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