カプチーノ·カシス
……やるじゃん、ハル。
あたしはその機転に感心しながらも、気がかりだった新商品の開発が片付いたことで、頭の中は違うことに支配されつつあった。
「あ、武内さん。明日持って行く作業手順書、五部ずつコピーしてきてくれるかな」
「はい、五部ですね」
……明日は、ついに大阪。
もちろん本来の目的は、向こうの開発チームの社員教育に行くこと。
だけどあたしの中の肉食獣の部分は、どうやって課長をその気にさせるか……そればかりを考えて爪を研ぐ。
課長ももう覚悟を決めたのか、今日はあたしと視線が合っても妙に赤くなったり目を逸らしたりしない。
あたしは頼まれた書類をコピーしながら、新幹線よりも飛行機よりも速く、意識を大阪へと飛ばしていた。