カプチーノ·カシス


「聞こえますか? パチパチ音が鳴り始めました。今が、シナモンローストです」


部屋中に、コーヒーの香りが広がる。

いつも嗅いでいるものだけど、この香りが好きだ、と思う。

疲れた頭の芯を落ち着かせ、そして思考がクリアになる。

それでも仕事の後彼女にどう接すればいいのか…その答えは、いくらこの香りを嗅ごうと出てきそうにない。


「音がおさまった頃がミディアムロースト、ここから豆の色は急激に変わるので注意して下さいね。茶色が濃くなってまた音がし始める手前、この当たりがシティローストです。コロンビアは深煎りに向かないのでとりあえずここで止めて、すばやく冷まします」


余熱で焙煎がさらに進まないよう彼女はドライヤーを手に取り、ざるに上げた豆をに冷風を当てた。

シティローストの完成だ。


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