カプチーノ·カシス
それでも僕はのんびり構えていた。
なぜなら課長の左手の薬指には誓いのしるしがある。
愛海ちゃんだってそのうち彼を諦めるだろう――そう思い続けて、もう四年が経つ。
それなのに愛海ちゃんは、いつまで経っても彼女は課長だけしか目に入らないという感じで諦める気配なんてない。
僕は焦ってあれこれアプローチを仕掛けているけど、まさに暖簾に腕押し。
全く相手にされずに、冷たい態度を取られることもしばしばだ。
それでも、僕も愛海ちゃんと同じでこの恋を諦めることなんてできなくて――――
「……身内に敵が多すぎる、か」
さっき柏木さんが呟いていた一言を、一人になった開発室でぽつり、呟いてみる。
その思いは僕も一緒だ。
課長という最大の敵の他に、男の僕から見てもとてつもなく魅力的な柏木さんというライバルまで現れてしまった。
……そして情けないことに、きっと僕が一番出遅れている。