カプチーノ·カシス
――――プルルルッ。
爽やかな朝の光の中で、その清々しさとは最も無縁の行為に及ぼうとしていたあたしたちを現実に引き戻したのは、電話の音だった。
「あぁ……もうタイムリミットか」
その音は課長のデスクの上にある開発室の電話機から鳴っていて、私用でないことは明らかだった。
無視するわけにはいかない。
「……続きは、明日の夜できますよ」
「そうだな……それじゃ、今日も頑張ろう」
最後にちゅ、と触れるだけのキスをして、課長はデスクの方まで歩いていき受話器を取った。
「はい、コーヒー開発吉沢」
あたしは残念と思う反面、ほっとしていた。
抱かれたくなかったわけではないけれど、今はまだ身体にも心にもハルの名残がありすぎるから。