カプチーノ·カシス
ロシアンティー


それから、課長とは本当に会社でしか会えない日々が続いた。

ときどき電話が来て甘い言葉は囁いてくれたけど、やっぱり触れ合えないのはツラい。

だからと言って、前みたいにハルの身体でその寂しさを埋めようとも思えなかった。


ハルはあたしに対して、会社では一応普通に接してくれてはいたけど、どこか一線引いたようなそっけない態度。

あたしはそれに傷ついては、また自己嫌悪に陥る……そんな毎日の繰り返しだった。


石原はお母さんの容態が思わしくなくて、結局仕事納めの三十日も出勤して来なかった。

大阪出張辺りからの目まぐるしい日々と比べれば、平和なものだ。

だけど……寂しいことに変わりはない。


大晦日の昼間、あたしはどうせ課長に逢えない年末年始なら実家で過ごそうと、部屋で荷造りをしていた。


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