カプチーノ·カシス
その日の午後、あたしは石原と二人でジャーマンブレンドと言う商品を試飲していた。
「ねぇ、このジャーマンちょっと苦みが足りなくない?」
「そう? ……僕にはわからないけど」
こんな風に風味の異常を感じた場合、いつもなら課長に最終的な判断を仰ぐのだけど、今はあいにく会議中で、席を外していた。
「柏木さん、これ飲んでもらえますか?」
せめてハルの意見が聞きたいと、色差計でL値を測っていたその背中に声を掛ける。
「少し高いな……」
そう呟きながらこちらに来たハルは、問題のジャーマンブレンドを一口飲んで味わう。
「いつもより、苦みが弱いと思うんですけど……」
「――だな、コクも弱い。L値も範囲内ではあるが高めだったから、焙煎が足りないんじゃねぇか?」
……と、言うことは。
「生産、ストップさせないと……」