カプチーノ·カシス


コーヒー豆は野菜や果物と同じく自然のものであるから、毎回状態が少しずつ違う。

だから、工場でちゃんと決められた行程を辿って製品になっても、今回のように風味がいつもと同じにならないことがあるのだ。

ある程度ならば誤差として許されるけれど、あまりにひどいと不良品として処分しなければならない。

つまり……本来なら一刻も早く現場に連絡して生産を止めさせるべき事態。

でも、課長が席を外しているときに風味の異常が起こるのは初めてのこと。

あたしたちはなかなか電話に手を伸ばすことができなかった。


「こういう時は、誰が責任者ってことになるんだ?」

「年数で言えば柏木さんだけど……ここでの経験の長さといつもの風味テストの正答率から考えればやっぱり……」


二人が揃って、あたしに注目する。

これはもう腹をくくるしかない……あたしも二人の目を見て頷いた。

大丈夫、毎日きちんと訓練しているもの。

あたしの舌に狂いはない。


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