カプチーノ·カシス


愛海ちゃんのアパートに着くと、ヘルメットを外した彼女は何かが吹っ切れたように、すっきりとした表情だった。


「バイクって気持ちいいんだね。すごく楽しかった」

「良かった。でも寒くなかった?」

「うん、これのお陰で」


愛海ちゃんは僕が貸したズボンを引っ張って微笑む。


「ねぇ、ここで脱ぐわけにはいかないし、部屋上がっていって? コーヒーくらいご馳走するから」


それは嬉しくて仕方のない申し出だったけど、僕は首を横に振った。


「ありがとう。でも遠慮しとこうかな」


……僕だって男だ。

ずっと背中に押し当てられてた柔らかいものの感触に、ときめき以外のよこしまな感情だって沸いていた。

しかも愛海ちゃんは今弱った状態。

部屋になんて上がったら、そこにつけ込んで何かしちゃいそうだ。


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