カプチーノ·カシス


大きな百貨店に入って、毎年この時季だけ作られる広いバレンタイン用の特設会場に足を進める。


「わー……混んでる」


あまりに多い人の数とその熱気に圧倒されて、思わず引き返したくなった。

だけど、ハルにはいつも感謝してるし……

まだ何もプレゼントを贈ったことがないから、どうしても素敵なチョコを選んで買いたい。


勇気を出して人混みに飛び込み、出店しているブランドのガラスケースを一つ一つ、丁寧に見て歩く。

そういえばアイツが甘いものが好きかどうかも知らないな……

そんな調査不足に頭を悩ませながらも、真剣にチョコを選んで「これだ!」というものに出会えた。

ハル、喜ぶかな……


なんだか気分が良くなって、手にぶら下げた紙袋を必要以上に揺らして会場を出たあたし。

このフロアは基本的に子供服を扱う売場だから、チョコが手に入ればもう用はないとエスカレーターに向かう途中で、ふと、見覚えのある背中が目に入った。


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