カプチーノ·カシス
それでもまだあたしの告白が信じられないらしい課長は、あたしの目の前にずいっと顔を寄せてきて、こんな見当外れなことを言い出した。
「だって……武内さんが好きなのは、柏木くんの筈だろ?」
……これにはあたしも頭に来た。
一世一代の告白のつもりで、さっきから自分の中の勇気を惜しみなく使ってきたというのに、課長の心には少しも響いてない。
仕方がないから、残りの勇気を全部つぎこんで、あたしは次の自分の行動に全てを懸けることにした。
大きく息を吸って、一息に言葉を継ぐ。
「なにを勘違いされているのかわかりませんけど、あたしが好きなのは柏木さんじゃありません。吉沢俊樹課長……ただ一人です」
言い切ると同時に、あたしは彼のネクタイをぐいっと引っ張って強引に課長の唇を奪った。
緊張のせいで、唇をただ強く押しつけるだけの、子どもみたいな下手なキスになってしまったけれど。