カプチーノ·カシス
しばらく経ってあたしがネクタイから手を離すと、課長は放心状態で二、三歩よろめいた。
「……これで、伝わりましたよね? あたし、本気ですから。――大阪の夜、覚悟しておいて下さいね」
あたしはそう言って自分のデスクの上に置き忘れていたマフラーを手に取ると、足早に開発室の扉へと向かう。
一方課長は、あたしが出て行くまでの間なにが起こったかわからないような顔で、ただ自分の唇を指でなぞっていた。