カプチーノ·カシス


そんなあたしの思いを知ってか知らずか、ハルが急にこんなことを言う。


『気が晴れないなら、電話でヤるか?』

「やるって……何を」

『テレフォンセックス』

「馬鹿! しないよ!」


なんだ、元気じゃねぇかと電話の向こうでハルが小さく笑う。

ほんとだ、いつの間にか元気になったみたい……あたし。


「……ありがと」


素直にお礼を口にすると、別に何もしてねぇよ、と返すハル。

意外と優しい奴なのかもしれないと、あたしは彼を少し見直した。

電話を切るとそのまま眠ってしまいたい欲求に駆られたけれど、こういうのは肌荒れのもとだ。明日もちゃんとした顔で課長に会いたい。


あたしは重い腰を上げて、化粧を落としにバスルームへ向かった。


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