カプチーノ·カシス


電話は、たった三コールでつながった。


『……もしもし?』

「ハル……今、平気?」

『あぁ。どうした?』


ハルの声がどことなく優しい。あたしを課長の元へけしかけたのはハルだから、何かがあったと悟っているのかもしれない。


「あたし……言っちゃった、課長に。好きだって」

『……んで、課長の返事は?』

「……聞かないで帰って来ちゃった」


あたしが言うと、電話の向こうからため息がひとつ聞こえた。


『なんで俺に電話してきた』

「……不安、なんだもん。明日から課長の態度が急に変わったりしたらどうしよう」

『そこまで子供じゃねぇだろ、あの人』

「そっ……か。そうだよね」


よく考えたら課長はあたしよりもずっと年上だし、公私混同とかするはずない……か。

いつもみたいにセックスしているわけじゃなく、ただ電話で話しているだけなのに、ハルの声は不思議とあたしの不安を取り除いていく。


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