tender dragon Ⅰ
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安田さんの家についても当然落ち着けるわけなんてなくて、携帯を握りしめたまま、玄関に座り込んだ。
「美波、風邪引く…」
何時間経っても、春斗からの連絡はない。
帰ってきて、もう時間がたつのに。
「大丈夫だから…」
そんなあたしを蒼空くんは心配そうに見つめていた。迷惑をかけてしまっている。
「蒼空くんは中にいていいよ…」
「いい。俺もここにいる」
気を遣ってか、あたしと同じように玄関に座ってくれて。隣にいてくれる。
安田さんは仕事で帰ってこない。
いつもならこの時間帯にはみんながいるのに、この家にはあたしと蒼空くんしかいない。
誰も、帰ってこない。
連絡もない。
あれからどうなったんだろう?
気になってしょうがなくて、何かしたいのに何も出来ない自分に腹が立った。
視界が歪む。涙が零れ落ちそうだった。
心配することしか出来ない。
迷惑をかけないように、ここにいるしかない。