ゆびきり
「愛羅ちゃん、昨日何で帰ったの?」
 今、かなりピンチかも…
 前には、氷室先輩。
 後ろには、冷たい体育館裏の壁。
 陸斗も、近くにいないし…
 誰か、助けて!

 さかのぼること、30分前。
 日直があって、朝一人で早く来たあたしは、昇降口で氷室先輩に会った。
「あっ、おはようございます」
 なんとなくだけど、挨拶したら、氷室先輩がとても怖い顔をして、あたしの手首をつかんで、体育館裏に連れてかれた。
「おはよう、愛羅ちゃん」
 笑顔で挨拶をしてくれたけど、顔はめちゃくちゃ怒ってる。
 そして、今の場面になる。
 あたしは、返事することができなくて、固まってると氷室先輩の顔が近づいてきて、あたしの口が氷室先輩の口でふさがれた。
「愛羅ちゃんが…返事くれるまで…ずっとするから…」
 氷室先輩は、逃げようとするあたしの舌を、自分の舌でからませてあたしが口を離すのを阻止している。
 必死に逃げようとしても、あたしの手首を強く押さえつけているし、体育館裏だから、誰にも助けてもらえない。
 陸斗…ごめんね。
 あたしの初めては、全部陸斗が良かった。
 なのに、氷室先輩に奪われちゃったよ。
 だけど、お願い助けに来て…



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